とある本屋での出来事です。
A「最近、小説を読もうかなって思ってるんだけどさ、どうやって選んだらいいのか
わかんないんだよね」
B「あー、確かに。Amazonのレビュー読んでもなんかいろいろ書いてあるしね、、、。せっかく買って読み始めても自分に合わなかったら読む気なくすよね」
A「そうそう。そうなったら嫌だからさ、、、。あっ、この小説ってこのまえ芥川賞だっけ? アレ取ったやつじゃん。これ読んでみようかな」
以前、本屋へ行ったときに、文芸書コーナーの辺りでこんな会話が聞こえてきました。
大学生くらいの男2人組です。
2人とも普段からぜんぜん小説を読んでなくて、どうやって選んだらいいのか迷っているようでした。
やっぱり小説って、いざ読んでみようと思っても、どれを選んだらいいのかわからないっていう人がかなり多いんですよね。それはすごく感じます。
そこで今回は、どうやって自分に合った小説を選んだらいいのか、選ぶ際に気を付けるべき点は何か、ということについて書いていきます。
ぼくは小説を読むようになって10年以上経っているので、さすがにもう選び方で悩むことはありません。自分の好みもわかってきましたし。
ですので、少しでも参考になればと思います。
こんな人におすすめ。
- 今までぜんぜん小説を読んでこなかったので、選び方がわからない
- 本選びに失敗したくない。自分に合った小説を選びたい
- これまでに何冊か読んできたけど、面白いと思える小説にあまり出会えたことがない
【前提】自分の興味のある物語を選ぶ
やっぱり自分が興味を持てるかどうかが一番大事だと思います。まずは。
あらすじを読んで、面白そうだなぁと思うかどうか。
初めは読み進めることのハードルがもの凄く高いので、この点を無視すると必ずつまずきます。
のちほど詳しく紹介しますが、選ぶ際にはサイトのレビューや書評、書店員のポップ、文学賞の受賞作品など、いろいろ参考になるものがあります。
しかしどれを参考にするにしても、自分が面白そうだと思うかどうか、興味を持てるかどうかという点を踏まえたうえで、最終的に選ぶ本を決めるべきです。
でないと失敗します。
小説を読む習慣のない人はまずはエンタメ系から読み始めるといいかも
エンタメ系と言われても、いまいちピンとこない人もいるかもしれません。
当然きちんとした定義があるわけではないのでハッキリとは言えませんが、娯楽系の内容で、楽しく読めるような作品が該当します。
「読みやすい」といってもいいかもしれませんね。
直木賞がまさにこれに含まれます。
一方で芥川賞はいわゆる純文学作品なので、正反対になります。
小説を読み慣れていない人はこの手の作品を読もうとすると、途中で脱落してしまうかもしれません。
国語の教科書に載っていたような話もほとんど純文学作品であり、これらを読みやすいと思う人はそうそういないですよね。
なので、小説を読む習慣のない人は娯楽系の内容であるエンタメ作品から選ぶといいでしょう。
小説を選ぶ際に参考になるもの
読む小説を選ぶ際に参考になるものは数多くあります。
それぞれメリット、デメリットがあれば、気をつけなければいけない点もあります。
書店員が書いたポップ
どの本屋へ行ってもたいてい、書店員が趣向を凝らしたポップが飾られています。
思わず手に取りたくなるような文言で本の魅力を綴っているポップは、選ぶ際にとても参考になるでしょう。
ただ、あまりにも書店員の個性が出すぎていたり、熱量が大きすぎたりして、小説の魅力が伝わってこないものも残念ながらあります。
また必要以上に大げさに書かれていて、それに惹かれて購入したものの期待外れだった、ということも少なくありません。
参考になるのは間違いありませんが、小説を読む習慣のあまりない人は注意が必要かなとも思います。
Amazon・楽天サイトのレビュー
まずネットで、面白そうな小説ないだろうか、と探してAmazonや楽天サイトでレビューを確認する人は多いと思います。
僕もけっこう見ますが、なかなか判断が難しいですね。
純粋な感想を書き込んでいる人もいれば、明らかに不自然なレビューでおそらくサクラだろうなと思われる人の書き込みもあったりするからです。
ただやっぱり気軽にいろんな人の感想が見られるわけなので、利用しない手はないです。
変なバイアスがかかってないか見極めたうえで参考にするといいでしょう。
書評サイト
通販サイトのレビューとは違い、だれでも書かせてもらえるわけではなく載せてもらえるわけでもありません。
様々な分野で活躍されている本好きの著名人や、書評家やライターの方などがおもに書いており、読みごたえがあるとともに唸るような書評も多くあります。
ただ、ふだんあまり小説を読み慣れてない人には内容がスッと入ってこないようなものも多く、難しいと感じるかもしれません。
サイトによりけりですが、参考にしにくいのもあるかなと。
おもな書評サイト
映像化作品
ドラマ化、映画化された作品からを見て、それからその原作である小説を読むというのはわりあい外れが少ないでしょう。
というのも、すでにドラマや映画を見た人は頭の中に内容があるので苦労なく物語に入っていけるからです。
ドラマや映画とはどう違うのか、という読み方もできますしね。
しかし映像化されたものを見ていなくて、「おっ、これってこの前ドラマでやってたやつじゃん。おもしろそう!読んでみようかな」と勢いで選んでしまうと失敗するおそれが高いです。
好きな芸能人やスポーツ選手のおすすめ
タレントやスポーツ選手などがおすすめしている小説を参考にするという方法もあります。
「この人が読んでいるのなら私も読んでみたい!」
「〇〇ってこういうの読むんだ。僕も読んでみようかな」
こういう興味の持ち方は自然なことですし、なにより読むモチベーションになります。
ネットで探せばけっこう出てきますので、検索してみるといいでしょう。
文学賞受賞作品
直木賞、芥川賞など数多くの文学賞があり、それらを参考にするのもアリだと思います。
賞をとったわけですから基本おもしろいのは間違いないのですが、小説を読み慣れてない人には良さが分からないということも多々あります。
審査員は深く読み込み、いろんな視点で分析し、著者の意図や考えなども推察しつつあれこれ踏まえたうえで評価をしているので、自分には合わなかった、ということはとうぜん出てきます。
先ほども書いたのですが、純文学作品から選ぶ芥川賞はけっこう難解なものもあります。
何が言いたいのかさっぱりわからない、良さがまったく理解できない、なんてことも珍しくありません。
有名な賞を取ったんだから絶対おもしろいだろう、という安易な気持ちで選ぶと読むのを途中で挫折してしまうので注意が必要ですね。
ちなみに文学賞とはちょっと違うのですが、本屋大賞の本は比較的読みやすい本が多いかと思います。
本を選んでいるのが読者に近い存在である書店員であり、ふだんあまり本を読まない人にとっても親しみやすい小説が候補にあがるからです。
親のおすすめ
読書家の親からおすすめしてもらうということもあるでしょう。
これは案外良いように思います。
なぜなら、親はとうぜん子供の性格を知っていますし、どういうことに興味を持っているのかそれなりに把握しているからです。
あからさまに好みでない作品をすすめられることはないんじゃないかなと。
親に何冊か選んでもらって、その中から自分で読んでみたいものを選べばより外れが少なくなるように思います。
僕は今までこうやって選んできた
僕が初めて買った小説は、横山秀夫著『半落ち』でした。
きっかけは覚えていませんが、小説を読んでみようと思い本屋へ行って、自分の興味の赴くままにあれこれ手にとってはあらすじを読み、悩んだ末に選んだ1冊でした。
この時はとくに何の当てもなく本屋へ行ってあらすじだけを頼りに選んだのですがアタリでしたね。
思った以上に自分の好みに合っており、それ以降、横山秀夫さんの新刊が出るたびに購入したものです。作家買いですね。
東野圭吾さんや恩田陸さん、奥田英朗さん、荻原浩さんの本をしょっちゅう読んでいた時期もありました。
最初の頃はぜんぜん作家の名前も知らないし、そもそもどうやって選んだらいいのか分からなかったので、一度読んで面白かったらその作家の本を読み続けることが多かったです。
作家買いならよっぽどでない限り外れはないですからね。
伊坂幸太郎さんの小説を初めて読んだのは、女優の永作博美さんがきっかけでした。
『重力ピエロ』を読んでいるとテレビで言っているのを見て、「なんだか面白そうだ!」と思い、その後すぐに本屋へ行って購入しました。
永福一成著『竹光侍』や奥泉光著『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』、早瀬耕著『未必のマクベス』なんかは、確か「本の雑誌」で紹介されているのを見て購入したんじゃなかったかな。
「本の雑誌」や「ダ・ヴィンチ」など本の紹介をしている雑誌も参考になります。
著者のインタビューが載っており、作品を書くきっかけとなった背景について書かれてたりするので興味深いです。
年末にはランキング形式で様々な本が紹介されるので毎年楽しみにしています。
今年の頭頃は純文学熱が高まっていたこともあり、芥川賞受賞作をネットで調べて、その中から自分の興味に合いそうなものを選んだりもしていました。
『影裏』や『1R1分34秒』『ニムロッド』など。
どれも初めての作家さんです。
今でも初めての作家さんの小説を読むことは多々ありますが、あらすじを読んでじっくり考えることは欠かさないですね。
おわりに
ふだんからそんなに小説を読む習慣のない人は、あまり背伸びをせずに素直に「面白そうだなぁ」と思った作品を読んでみるのがいいと思います。
ただそれだとあまりにも範囲が広すぎるので、候補を絞るためにレビューや書評サイト、ポップ、映像化作品などを参考にするといいでしょう。
何冊も読んでいるうちにきっと興味や好みの幅が広がり、選ぶ際の勘も働いてくるはずです。
お読みいただきありがとうございました。