ここ1年くらいの間に近所に3軒の平屋建ての家が建った。
1軒は駅のすぐ近くで、おそらく30秒もあれば着いてしまうような場所にある。徒歩3分くらいの所にはスーパーもあり、同じ敷地内にはドラッグストアも併設しているため買い物には困らない。通勤路の途中にあるので毎朝必ず見かけている。
次の1軒は川沿いに建てられた平屋建て。こちらは散歩コースの途中にありちょくちょく目にする。1軒目よりは敷地が広く、小さいながらも畑がある。駐車場にはまだ新しそうな軽トラックが止められており、これはどういう用途で乗るのだろうか、などと勝手に想像している。
最後の1軒はログハウスでできた平屋建てで、家の大きさも敷地の広さも、3軒中いちばんである。敷地は奥行きがあり、手前にはけっこうなスペースが広がっている。大木で作られた立派なログハウスの平屋建てで、その外観はロッジのようにも見える。ここも2軒目と同じように敷地内には畑が耕されている。
どの平屋建ても異なった外観をしていた。きっと家の間取りもそれぞれに特徴があり、中の様子も住人のこだわりで溢れているのだろう。
通勤時や散歩中にこれらの平屋建てを何度か見ているうちに、柄にもなく「平屋建ていいなぁ」と思ってしまった。
他人の家を見て、いいなぁ、素敵だなぁ、なんて思うタイプの人間ではなかったのに、なんだか平屋建てには惹かれてしまったのだ。
この3軒の平屋建てはすべて60歳以上と思われる夫婦が住んでいた。きっと定年退職を機にセカンドライフを楽しもうと考え、平屋建てに住むという選択をしたのだと思う。
自分にはこういう生活はまだまだ先のことだが、それでも惹かれるものを感じたのだった。いつかこういう家に住んでのんびり気の向くままに過ごすのも悪くないなと。
しかしそのためにはいくつもの条件をクリアして、高いハードルを越えなくてはならず、そこまで辿り着けるのだろうかと憂鬱になる。
もっとも大切なのがこの2つだろう。
- じゅうぶんな貯蓄
- お嫁さん(できれば優しくて、料理上手で、気立ての良い女性)
残念ながら現時点では困難としか思えない。
まったく見通しが立っていない。
憧れるのは勝手だし想像を膨らませるのは大いに結構なことだと思うが、平屋建てへの道はあまりにも険しく、今の自分にはかすんで見える。どうしたものか。
段階を踏むわけでもないが、平屋建てに住む前にメゾネットタイプのマンションにも住んでみたいと思っている。
ハライチの岩井さんが住んでいるあのメゾネットタイプである。
「ハライチのターン」ではおなじみだ。
メゾネットタイプのなにが良いって、「なんかオシャレ」なところだ。
メゾネットタイプのマンションに住んでるってだけで、なんだかオシャレに感じてしまう。
そこに住んでる人もオシャレに見えてしまう。
そういうメゾネット効果なるものがあるのだ。
しかしそこではたと気づく。
これはホットサンドメーカーと同じ運命を辿るんじゃないだろうか。
うちにはホットサンドメーカーがある。
誰だったか忘れたが、ホットサンドメーカーでサンドイッチを作って食べたらもの凄くおいしかった、とエッセイで書いていたのだ。
それを読んで単純にもホットサンドメーカーを購入したのだった。
たしかにホットサンドメーカーで作ったサンドイッチはおいしい。
中に挟む具材を変えては、何日も続けて作ったものだった。本当においしかった。
だが1ヶ月も経たないうちに飽きてしまった。
作るのもめんどうになってしまった。
今では滅多に使わない。気が向いたときに使用するくらいである。
メゾネットタイプもそれと同じことになるおそれを危惧してしまったのだ。
ホットサンドメーカーと同じ運命を辿るのではないかと。
初めは物珍しかった間取りも、時間が経つとなんでもなく思えてくる。
階段の上り下りもただただ億劫になってくる。
そしてそのうち、引っ越したくなる。
飽き性でめんどくさがりな自分の性格を考えると十分あり得る話だった。
僕にメゾネットタイプは向いてないのかもしれない。
検討が必要だった。
平屋建てとメゾネットに憧れを抱いている僕は現在1Kのマンションの3階に住んでいる。もう4年半くらい経つだろうか。今のところ引っ越す予定はない。
お読みいただきありがとうございました。