メモ書きに描いた犬のイラスト


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昼ご飯を食べたあと母親は、車に乗って買い物へ出かけた。2,3軒寄るところがあるらしく、もしかしたら遅くなるかもとのことだった。

いってらっしゃい、と声をかけ見送ったのが1時間前。

今日は土曜日で学校が休みなので、私は家でゆっくりと過ごしている。父は友人と釣りへ出かけ、弟は部活だ。
珍しいことに午前中に宿題を終わらせたため、今はちょっと暇を持て余していた。
机の上の文庫本を手に取った私はソファに浅くもたれかかり、栞を挟んだところから読み始めた。
お腹が満たされてウトウトしながらも、30分くらいは読書を続けた。
その後、文庫本を置いてスマホを手に取ると、ただ目的もなくあれこれ色んな記事を読み漁った。
ふと窓の外を見ると愛犬のタロウが、何やらあっちへ行ったりこっちへ行ったりして動き回っていた。なんだか楽しそうだった。
ここからは見えないが、蝶々かトンボでも追いかけているのだろうか。
私はふたたび瞼が重くなり、気がつくと眠っていた。


起きると16時を少し過ぎていた。
ボーっとした頭で眠たい目をこすりながら庭に出ると、洗濯物を取り込んだ。
洗濯好きな母は週末になると、私や父、弟にわざわざ「洗う物ない⁉」と聞いて回り、しまいにはクローゼットから汚れていそうな服を探してきてはばんばん洗濯機に放り込んだ。
そのせいで洗濯物を取り込むのも一苦労だった。
タロウがじゃれてくるなか何度か往復してすべての洗濯物を家の中に入れると、ペットボトルからグラスに水を注いで飲み一息ついた。
昼寝から起きたあと何も飲んでいなかったので、安いミネラルウォーターがいつもよりおいしく感じられた。

さてこれからどうしようかと考え、そういえばタロウの散歩に行ってないことに気づいた。
ふだんは夕方の時間になると母が散歩に連れて行っていたのだが、今日は母が出かけておりそれも無理そうだった。
それならと、私が行くことにした。
散歩に必要なセットを手提げかばんに入れて玄関へ行こうとして足を止めた。
途中で母が帰ってくるかもしれないので、メモ書きを残しておこうと思ったのだ。
引き出しの中からメモ用紙を取り出す。
「タロウの散歩に行ってきます」と書き、その横に犬のイラストを書いて添えた。
それを机の真ん中に置くと、外へ出てタロウをリードにつなぎ、家の前の通りを東の方へと進んだ。

1時間弱ほど散歩して戻ると母はすでに帰宅していた。
「ただいま、おかえり」と両方言う母に対して、私も「ただいま、おかえり」と同じように返す。
そのあとまた母が声をかけてきた。
「タロウの散歩に行ってくれたんだ、ありがとね」
ところで、と続ける。
「ところであのタヌキの絵はなんなの?」
私はしばし固まった。タヌキ?
母は何を言っているのだろうか? と記憶をたどった。
するとそれが、私がメモ書きに描いた犬のイラストを指していることに気がついた。
あまりの衝撃に動揺し、私はどう返事すればいいのか困った。
「あぁ、、、なんかその、かわいいかなぁと思って」
なぜだか本当のことが言えず、思わずごまかしてしまった。
胸に手を当てると、心臓が早鐘を打っていた。

母はちょっと抜けているところがあった。
ボケたのか、本気で間違えたのか分かりにくいことを言うことがたまにあり、その度に私や父、弟は反応に困ったものだった。

そろそろ弟が帰宅するだろう。父ももう間もなく帰ってくるだろう。
2人が帰ってきたら絶対にこの話を聞かせて、どう思うか尋ねてみようと思う。

 

※これはフィクションです